子どものためにどんな英語辞書を買えばよいか迷っていませんか?
この記事では、年齢やレベルに合わせた子ども向けのおすすめ英語辞書を紹介します。
辞書は上手く使えば、ある意味で最強の英語学習ツールです。
英語辞書を上手く使うコツは、「買う前はよーく考えて、買ったあとは迷わずにすぐ引く」ということです。
長い付き合いになることも多いですから、お気に入りの辞書を選んで、使い倒したいですね。
では、いってみましょう。
レベルの目安についてなど
この記事で想定する子どもの英語レベルは下記のとおりです(あくまで目安です)。
レベル | 学年 | 目標とする英検の級 |
レベル1 | 未就学児(4~5歳) | なし |
レベル2 | 小学低学年~中学年 | 5級から4級 |
レベル3 | 小学中学年~高学年 | 4級から3級 |
レベル1は、習い始めの子どもです。アルファベットを読むことができ、身の回りの簡単な単語を知っているレベルです。
レベル2のこどもは、簡単な文が読めます。"I am hungry."のようにbe動詞を使った文や、"I play baseball."のように一般動詞を使った文が読めるレベルです。
レベル3の子どもは、300~500語ていどの内容がある文章を読めます。中学2年までに習う文法項目(子どもによってはそれ以上)をすでに理解しているレベルです。
<年齢について>
年齢については少し異論があるかも知れません。
小学6年生でも英語がほとんど分からない子もいるし、逆に未就学児でも英検3級に合格する子もいるからです。年齢で分ける意味はないのではないか、という訳です。
確かにそれはその通りなのですが、一般に年齢と日本語の習得度は比例しますし、習得可能な英語力はその子の日本語力に比例します。
また知能や学力という要素もありますから、日本で普通に暮らしている限りは、年齢と英語力との間には関連性があります。よって、ここでは年齢でレベル分けをしました。
<カタカナを使用することについて>
子ども向けの辞書では、発音記号の代わりにカタカナを使って発音を表記していることがよくあります。
子どもには発音記号を読むのが難しいという配慮でしょうが、このカタカナをとても嫌う人がいます。
カタカナを使うと本物の英語の発音を理解する上で障害になるという考えのようです。
しかし、わたしは英語の音を理解するための補助としてカタカナを使うことは問題ないと考えています。
確かにカタカナしか書いてない辞書は良くないですし、単語を覚えるときには必ずネイティブスピーカーによる音声を聴くべきです。
しかし、子どもは単語を一回聴いただけで習得する訳ではありません。
何となく見覚えのある単語に出会って「この単語なんて読むんだったかな?」となったときに、発音記号も知らず、カタカナを見てもいけないのであれば、その都度オンライン辞書や電子辞書で確認するしかなくなります。
そんなときにカタカナがあれば、すぐに「ああ、そうだった」と理解できます。
もちろん発音記号を理解すればよい話しではありますが、あくまで補助的手段としてカタカナを使うことは実用的です。
言語を習得することは、一つひとつの作業を完璧にしないと取り返しがつかないプラモデル作りのようなものではなく、何度も何度も修正しながら質を上げていく刀鍛冶のようなものです。
仮にカタカナ発音を覚えてしまったとしても、ネイティブスピーカーによる音声を聴き続けていれば頭の中で修正されていきます。
そんな訳で、カタカナについてそこまで心配し過ぎる必要はないと思います。
このあとの辞書の評価においても、カタカナが載っているからといって評価を下げたりはしていません。
カタカナだけはダメですが、発音記号とカタカナが載っていればOK、フォニックス的な要素が入っていればさらに良い、という基準で評価しました。
<英英辞書について>
カタカナの使用と同じように嫌われるのが、日本語に訳すという作業です。
英語は英語のまま理解すべきであって日本語に訳すことはその障害になる、という訳です。
したがって、そういう人は英和辞書ではなく英英辞書を使う傾向があります。
もちろん、わたしも英英辞書にはとてもお世話になりましたし、その素晴らしさを否定するつもりは全くありません。
しかし、わたしは子どもの英語学習においては特に英英辞書は必要ないと考えています。
特に名詞を覚える際には英和辞書が必要です。
例えば、"pear"という単語の意味を知りたいとして、手元にある『Scholastic Children's Dictionary』(この辞書は素晴らしい辞書ですが)を引くと、
"A juicy, sweet, yellow, green, red, or brown fruit with a smooth skin."
とあります(ちなみに写真はありません)。
これだけで理解するのはなかなか難しいですが、英和辞書を引けば「なし(梨)」と一発で分かります。
という訳で、子どものうちは英和辞書の助けを借りてどんどん言葉を増やしていく方が得策だと思います。
ただ例外があって、それは習い始めに使う、イラスト付きというよりは絵本そのものの収録語数が300語ていどの英英辞書です。
各社から"First Dictionary"のような書名で発売されていますが、こういった辞書は役に立ちます。
すべての単語がイラスト(または写真)で表されていますから、文字に頼らずイラストで理解することができますので、英語の習い始めに使うと良いと思います。
下記でおすすめ本を紹介しています。
また、英検3級に合格してそれ以上を目指そうという子にも英英辞書は有効です。
そのくらいになると語彙数も増えて英英辞書の定義文を自分で読めるようになるからです。
例えば、Longmanの辞書だと約2000語の定義用語彙だけを使って語義が説明されているので、この2000語を覚えればどんどん辞書を引くことができます。
英検で言うと準2級くらいがその入口に立ったくらいかなと思います。
レベル1の子ども向けおすすめ英語辞書
未就学児や英語を習い始めであるレベル1の子ども向けのおすすめ辞書は次のとおりです。
おすすめ度★★★
『Collins COBUILD First English Words』(HarperCollins UK)
(収録語数:300語 発音:発音記号なし、付属CDあり)
この辞書の良さは、まずすべての単語をイラストで理解できることです。
収録語数が300語に絞られているため、すべての単語がイラストで説明されています。
単語を覚えるための歌も36曲用意されており、英語を習い始めたときに使う辞書としては最適だと思います。
同様の辞書として『Oxford Very First Dictionary』があり収録語数もほぼ同じですが、この本は単語がABC順に並んでいます。
それに対して『First English Words』では分野別になっており、子どもにはその方が覚えやすそうだったのでこちらをおすすめします。
なお、似た本として、よく売れている『Longman Children's Picture Dictionary』がありますが、この本の収録語数は約800語なのでイラストだけで覚えるにはやや多いように思います。
まずは『First English Words』で最重要な300語を確実に覚えるのが近道です。
おすすめ度★★☆
『新レインボーはじめて英語辞典』佐藤久美子監修(学研)
(収録語数:英和約900語 発音:発音記号+カタカナ)
ここからは覚えるための辞書ではなく、学習しながら引いたり、読んだりするための辞書です。
この辞書は英和だけでなく、絵辞典約640語、英和約900語、和英約1,000語の3部構成になっています。対象は「幼児~小学生向け、小学英語から英検5級までOK」となっています。
個人的には英和部分だけのシンプルな辞書が欲しいと思う方なのですが、いろいろな情報が載っている方が子どもには親しみやすいのかも知れません。
すべての漢字にふりがなが振られているなど、子どもが使うということをよく考えている辞書です。
辞書を引くという習慣をつけるための第一歩の辞書としておすすめです。
おすすめ度★☆☆
『英和じてん絵本』とだこうしろう、アン・へリング著(戸田デザイン研究室)
(収録語数:1,200語 発音:発音記号+カタカナ)
絵本がそのまま辞書になったようなとても個性的な辞書です。
本の形からして縦長の個性的なデザインだし、すべての単語にシンプルなイラストが付いていて、見ていて楽しい辞書です。
好きな人は大好きになって、ずっと大事にしたくなるような辞書です。
内容的にも押さえるべきところはしっかり押さえており、辞書としても決して侮れない辞書です。
万人向けとは言えませんが、試してみる価値ありです。
レベル2の子ども向けおすすめ英語辞書
レベル2(小学低学年~中学年、英検5級~4級)の子ども向けのおすすめ辞書は次のとおりです。
おすすめ度★★★
『新レインボー小学英語辞典』佐藤久美子監修(学研)
(収録語数:英和・和英合わせて16,690語)
(発音:発音記号+カタカナ)
2020年からの指導要領改訂に合わせるようについ最近出版された辞書です。
小学生向け英語辞書の決定版となるべく、これでもかと情報が詰め込まれています。
対象は「はじめて英語にふれる人から、中学入門期まで」となっており、英検で言うと英検3級までを対象としているようです。
英検受験も強く意識されており、英検5級から3級までによく出る単語には各級のマークが付いているので、単語のレベルが分かるようになっています。
ページ両端にある“つめ”に色分けして表示されたアルファベットといい、本の作りにまでこだわって満を持して出版されたという感じです。
確かに素晴らしい辞書なのですが、わたしにとっては旧版である『レインボー英和・和英辞典』(羽鳥博愛監修)が忘れられません。
旧版の方がイラストが多く、発音についても発音記号とカタカナの他にフォニックスに関する情報も記載されていて、とても使いやすい辞書でした。
ただ惜しむらくは、語法に関する情報が載っていないことでした。品詞の区別すら載っていなかったのです。
習い始めならまだ良いですが、英検の対策をすることなどを考えるとやはり品詞の区分や語法に関する情報は必要でしょう。
その点、新しい『新レインボー小学英語辞典』は抜かりありません。どちらの情報もきちんと載っています。
ということで、やはり新版に軍配が上がると言えそうです。
おすすめ度★★☆
『プログレッシブ小学英和・和英辞典』吉田研作編集(小学館)
(収録語数:英和4,000語+和英6,300語 発音:発音記号+カタカナ)
この辞書もつい最近出版されました。やはり各社2020年を意識していますね。
対象は「小学低学年から中学初級まで」かつ「英検5級から3級まで」となっています。
英検を意識したところなども『新レインボー』と似通っており、内容的には甲乙つけがたいものになっています。
今後この2冊が小学生向け英語辞書のツートップになるのではないでしょうか。
ちなみに『プログレッシブ小学英和・和英辞典』の装画は、人気の絵本作家であるtupera tuperaさんが担当しています。
絵が好きな人にとっては案外そんなところがポイントになるかも知れません。
レベル3の子ども向けおすすめ英語辞書
レベル3(小学中学年~高学年、英検4級~3級)の子ども向けのカテゴリーです。
このレベルになると、だんだんと高校生以上向けの辞書と変わらなくなってきます。
このカテゴリーに該当するのが次の3冊です。
『ジュニア・アンカー英和・和英辞典』羽鳥博愛・永田博人編集(学研)
(収録語数:英和13,900語+和英14,860語)
『ジュニアクラウン小学英和・和英辞典』(三省堂)
(収録語数:英和約7,000語+和英約8,000語)
『プログレッシブ中学英和・和英辞典』吉田研作編集(小学館)
(収録語数:英和15,800語+和英19,000語)
『ジュニア・アンカー』は、『レインボー』シリーズと出版社も元の監修者も同じで、『レインボー』シリーズの上位版です。
ということで、小学生(+中学初期)向けの英語辞書は、ジュニア・アンカー(レインボー)、クラウン、プログレッシブの3強となっています。
このなかで敢えてわたしのおすすめを挙げるなら、『ジュニア・アンカー英和・和英辞典』ですが、各社とも素晴らしい辞書になっています。
という訳で、普段の学習には上記のなかのどれかを使うとして、英検3級を取得してさらに上を目指す子どもには以下の2冊の英英辞書をおすすめします。
『Longman Basic English Dictionary』Pearson
収録語数は約12,000語。各箇所にイラストがあります。
Longmanの辞書なのでもともと2,000語の定義語彙で語義が説明されているので分かりやすいのですが、この辞書はさらに説明がシンプルで分かりやすいです。
まあ逆に言うと、説明が簡潔過ぎてあまり細かな表現の意味を調べるのには不向きですが、中学生レベルまでの単語を調べるのには十分使えます。
何より「英英辞書でも使える!」という実感を得るためには最適の辞書だと思います。
初めての英英辞書としておすすめします。
『Scholastic Children's Dictionary』Scholastic Inc.
収録語数は約30,000語。各箇所にイラストや写真が載っている子ども向けの百科事典のような辞書です。
上のLongmanは非ネイティブ向けの学習用辞書ですが、この本は完全にネイティブ向けの辞書で、対象は8~12歳となっています。
しかし、8~12歳向けだから簡単だろうと思うとこれが大間違いで、ネイティブ向けなので、非ネイティブにはぴんと来ない表現がたくさん出てきます。
もちろん簡潔で分かりやすい説明もたくさんあるのですが、挑戦し甲斐のある辞書だと言えます。
やる気のあるお子さんにはそっとプレゼントしてみてはいかがでしょう。
楽しそうに読んでいるようなら実力がぐんと伸びること間違いなしです。
収録語数について(二段階調査のすすめ)
子ども向けの辞書を紹介したり、子ども向けの辞書のレビューを読んだりしていると、「収録語数が少ない」とか「載ってない単語がある」といった声によく出会います。
こういう声を聞くたびにわたしは思います。「別の辞書を引けばよいだけなのに…」と。
辞書を買う人は1冊でたくさんの単語が載っていた方がお得な感じがするので、収録語数がより多い辞書を購入する傾向があります。
そして、それに合わせて各出版社の辞書も収録語数がだんだん増える傾向にあります。
しかし、収録語数が多い方が必ずしもお得とは言えません。
収録語数が多くなれば、その分1語あたりの情報は少なくなる(もしくは分厚くなる)ので、使い勝手は悪くなります。
特に小学生の頃に使う辞書は、単に単語の意味を調べるだけでなく学習用辞書としての役割が大きいので、調べもしない単語がたくさん載っているより重要語の説明が充実している方が役に立つと思います。
辞書に関しては「大は小を兼ねる」は間違いで、その時々に合わせた必要な語数が収録されている辞書を使う方が効果的です。
では、知らない単語を調べていて辞書に載っていなかったらどうするか?
答えは簡単で、より上位の大学受験用や大人向けの辞書を引けばよいのです。
我が家では子どもが使っている辞書に知りたい単語が載っていないときは、わたしが使っていた『ジーニアス英和辞典』を引くように指導しています。
これを我が家では二段階調査と呼んでいますが、子どもは「おっ、大人の単語だ」なんて言って案外楽しんでやっています。
「大人の辞書」で調べたこと自体がきっかけで単語を覚えることもあります。
確かに何冊も辞書を引くのは面倒なことですが、「英語の実力は辞書を引く回数に比例する」なんてことも言われますから、いろいろ調べた経験は決して無駄ではないと思っています。
ぜひ皆さんも、「自分にあった辞書を使い、載ってなければより詳しい辞書を引く」ということをやってみるのをおすすめします。
さて、今回は子ども向けのおすすめ辞書を紹介しました。
皆さんの参考になれば幸いです。