microshovelです。今日は文法書のおすすめを紹介します。
英語の学習にとって文法書は欠かせないものです。
英検、TOEICなどの資格試験を受験するなら文法の勉強は必須ですし、それ以外でも英語を本当に理解しようと思えば文法を避けて通ることはできません。
たまに「文法など要らない。文法が分からなくても英会話はできる」と言う人がいて困ります。
確かに"How are you?"とか"See you later."とかのフレーズを覚えるのに文法書は必要ないでしょう。
でも例えば「明日釣りに行く予定です」と言うときはどうするのでしょうか?未来のことなので未来形を使う必要があります。
さらに「でも雨が降ったら行かない」と言うときはどうでしょう?仮定法を使わなければなりません。
このように文法というのは英語の仕組みそのものですから、英語ができるようになりたければ文法の勉強は避けて通れません。
しかし、なぜそんなに文法は嫌われるのでしょうか?
おそらくいわゆる「学校英語」の影響なのだろうと思います。
訳の分からない文法用語を強制されて嫌気がさしているのかも知れません。
しかし、学校英語というのは親の小言みたいなもので、そのときはうるさくても後になって役立つものです。
「親の意見と冷や酒は後で効く」というやつです。表現が古いですが。
「親の意見と学校英語は後で効く」んです。
バカにして学校英語を勉強しないのはもったいないです。
詳しくは後で説明しますが、文法用語は本質ではありません。
例文こそが文法書の本質です。
その例文を確実に理解する手助けをするために文法用語があるのです。
いわば文法用語は道具に過ぎませんから、しっくりこなければ一旦無視して例文に集中すればよいのです。
文法用語には確かに「何でこんなに分かりにくい呼び方なんだろう」と思うものもありますが、文法という枠組み自体は間違いなく役に立つものです。
前置きが長くなりました。では、いってみましょう。
文法書の種類
英語の文法書にはさまざまな種類がありますが、わたしは次の3つのカテゴリーに分類しています。
- 引くための文法書 … 分からないときに辞書のように引く文法書
- 読むための文法書 … 通読して理解するための文法書
- やるための文法書 … 問題を解いたり、音読するための文法書
例えば、「引くための文法書」にはさまざまな文法項目が記載されていますから分厚くなるのが普通です。
それを「分厚過ぎて読み通せないからダメな本だ」というのは間違いです。辞書のように引くのが目的ですから。
逆に「やるための文法書」は、学習すべき項目が絞ってありますから比較的薄い本になります。
それを「説明が抜けている項目が多すぎる」というのも同様に間違いです。当たり前ですね。
一言で文法書といってもさまざまな種類がありますから、目的にあった文法書を使うようにしましょう。
引くための文法書
わたしが引くための文法書としておすすめするのは、下記の本です。
『英文法解説』江川泰一郎 著(金子書房)
この本はもともと1953年に発行された後に、1964年の改訂を経て1991年に全面的に書き直されたという古い本です。
古い本ですが、それだけ売れ続けている分だけ信頼できる本とも言えます。
もともと受験生用の参考書として使われることが多かった本ですが、高校生から大学生、社会人そして翻訳者まで幅広く使える本です。
わたしも翻訳の仕事をするときは常に傍に置いて、自分のなかであいまいなことがあるとすぐに調べて読むようにしています。
よく高く評価されるのが「名詞構文」の項目です。
ここでは「英語は名詞中心の言語、日本語は動詞中心の言語」という良く指摘される二つの言語の違いが見事に説明されています。
基本例をひとつ挙げます。
We are hoping for your quick recovery.(あなたが早くよくなるように願っています)
ここでは、You will recover quickly(あなたが早くよくなる)という動詞を使った内容がyour quick recovery(あなたの早い回復)という名詞句になっていることが示されています。
この他にも多くの例文を挙げて詳しく説明されていますし、なかには「翻訳の技術」という項目で日本語に訳す際のコツまで紹介されているので、困ったときには本当に頼りになります。
あまり他の本の悪口は言いたくないのですが、同じカテゴリーで最近高く評価されている他の本(『ロイヤル英文法』や『総合英語Forest』など)と比べても項目の整理具合、説明の正確さなどの点で遥かに優れていると思います。
わたしにとっては「引くための文法書」の最高峰です。
読むための文法書
読むための文法書とは、最初のページから通読して理解するための本です。
このカテゴリーでわたしがおすすめするのは、下記の本です。
『表現のための実践ロイヤル英文法』綿貫陽 マーク・ピーターセン 共著(旺文社)
この本の良さを大まかにまとめると次の3点です。
- 説明が良い意味で簡潔(回りくどくない、例文が多い)
- 日本人が理解しにくい部分を説明した"Helpful Hint"(全部で127ある)がとにかく分かりやすくて面白い
- 練習問題が多く、巻末には別冊の「英作文のための暗記用例文300」まで付いているので、英作文の練習にもなる。
この本は説明が分かりやすいので、通して読むには最適でしょう。
とは言え、ある程度の厚さがあるので始めから一字一句を読んでいくとかなりの時間がかかります。
ざっと流すように読んで、興味を持った項目を熟読するだけでも大いに効果があります。
Helpful Hintの説明を読んでも分かりますが、「引くための文法書」というよりは、書名の通り実際に英語を使うことに焦点を当てた本です。
やるための文法書
やるための文法書とは少し表現が雑ですが、要は例文を解いたり、筆写したり、音読したりして使い倒すための文法書です。
英語学習の初期の段階には欠かせません。
このカテゴリーでわたしがおすすめするのは、下記の本です。
『毎日の英文法 頭の中に「英語のパターン」をつくる』ジェームス・バーダマン 著(朝日新聞出版)
この著者が書いた本にはほとんどはずれがありません。
この本も素晴らしいです。
書籍の説明文に「無料音声ダウンロードつきのトレーニングブックです」とあるように、トレーニングによって英語を実際に身に付けるための本です。
「英語の文法が分からない」と嘆く高校生には「何も言わず、3か月間この本をやってみろ」と言いたいです。
以前も書きましたが、英語学習の半分はトレーニングです。
始めから説明を読んですべて理解できる訳ではありません。
例文をひたすら読んだり、書いたりしているうちに理解が後から追いかけてくることが多いのです。
古いやり方だと笑うことなかれ。確実に効果のある方法です。
番外編
番外編として上記の他にもよく名前の挙がる文法書について少しだけ述べます。
『一億人の英文法』大西泰斗 ポール・マクベイ 著(東進ブックス)
英語雑誌などでは「現在最強の文法書」と呼ばれている文法書です。
たしかにある面では素晴らしい文法書だと思います。
一言でいうと、「言葉の持つイメージを膨らます本」です。
その言葉の持つイメージをイラストも使用して分かりやすく説明しています。
著者自身も話しているように、「英語を話すための文法書」であって、「文法用語は極力排して」記述されています。
しかし、わたしはおすすめしません。
理由のひとつは、文法用語を排して語り口調で説明しているために、逆に説明が冗長でくどくなっているからです。
文法用語を使いたくないあまりに逆に分かりづらくなっています。
定冠詞"the"の説明でも、「theの与える光」とか「ピン!とくるthe」とか、わたしには説明が回りくどく感じてしまいます。
説明にしても学校英語がいかに分かりづらいかということを前提に説明されています。
「学校英語だと分からなくても無理ないよね。でもこう考えればすぐ分かるでしょ」というようなニュアンス。
既存の文法に対するリスペクトがありません。
その割には目次を見ても分かるように、「比較」・「TO不定詞」・「節」など既存の文法の枠組みをそのまま使っています。
試みとしては面白く、学校英語を大きな意味で補完する内容になり得る可能性を感じるだけにもったいないです。
『English Grammar in Use』Cambridge University Press
この本もとても評価が高いようです。
確かに英語で英語を学ぶという方法はやり方によっては、とても効果がある方法ですが、やり方を間違えるととても中途半端になってしまいます。
下手をすると、英語の文法書を読むために日本語の文法書と英和辞典が必要なことになりかねません。
とある英語教材ガイドを見ると、この本について「日本語を介さない分ストレスが少ない」となっていますが本気でしょうか?
日本語を読むよりも英語を読む方がストレスが少ないレベルなのであれば、この本を読む必要はありません。
この本の内容を批判している訳ではありません。
わたしも読みましたが、内容は素晴らしいと思います。説明文も分かりやすいし、「へぇ、ネイティブはこう考えるのか」と感心した箇所もありました。
ただ、「日本語の文法書は分かりにくい。英語で書かれた本の方が優れている」と何となく思ってしまう風潮に違和感を感じるだけです。
繰り返しになりますが、内容は素晴らしいので中級者から上級者が読むための文法書として使うのは役に立つと思います。
初級者は手を出さない方が無難です。
文法の勉強方法について
さて、おすすめの文法書は紹介しました。
では、それらの本を使ってどのように文法を学べばよいかという点について案内します。
文法の勉強に関するわたしの考えは、
例文こそが文法書の本質だ!
ということです。例文主義です。
例文に挙げたような文を正確に理解するための説明の枠組みとして考え出されたのが文法です。
文法があって例文がある訳ではありません。逆です。
具体的な方法としては、「文法書に載っている例文を書き写して音読する」というやり方で勉強します。
これまた古いやり方ですが、効果は確実です。
わたしの知っている例でも、英語がまったく出来なかった学生が夏休みの間文法書の例文をひたすら書き写していると、2学期には見違えるように英語が出来るようになっていた例があります。
最初の段階では理屈抜きで覚えるしかないこともあるのです。
この「理屈抜きで」というのがすでに古臭くて嫌われるようで、学校でも生徒に嫌われたくない先生は「理屈抜きで」という言葉は使わないようです。
しかし、禅問答っぽくなりますが、理屈を理解するためには理屈抜きで覚えなければならないこともあると思います。
例文を書き写す訳ですから、そんなに分厚い本では無理です。
まさに「やるための文法書」で挙げた『毎日の英文法』ような薄めの本がおすすめです。
受験用参考書では、『今井の英文法教室(上・下)』今井宏 著(東進ブックス)が優れていると思います。
ということで、文法の勉強方法を大まかにまとめると以下の通りです。
- 初級者段階では「やるための文法書」を使って、例文の書写・音読を行う。
- 中級者段階では「読むための文法書」を通読して英語を深く理解する。
- 上級者段階では、さまざまな本や雑誌を読んで理解があいまいな項目があったら「引くための文法書」で調べて、理解をさらに深める。
あなたが大学受験生であっても、資格試験を受ける社会人であっても、仕事で英語を使うビジネスマンであっても文法の勉強は役立ちます。
そんな皆さんにとって上記が少しでも参考になれば幸いです。