microshovelです。前回の記事では「何を読むか?」について紹介しました。今回は「どう読むか?」について紹介します。
精読or速読?
英語学習の世界では、英語のリーディングに大切なのは精読か、それとも速読かということがよく議論されます。
- 精読・・・一語一語の意味や、文の構造を分析しながら詳しく読むこと。中学校・高校で英語を習うときのやり方がまさに精読です。
- 速読・・・一語一語に意味にとらわれ過ぎず、内容を意識しながら速く読み進めること。多読もここに含まれると思います。
もちろんどちらも大事です。
どちらかだけが大事という訳ではなく、年齢、目的、学習段階などの合わせて精読と速読の割合を変えるべきです。
例えば、読み聞かせをするような幼い子どもの場合は、もちろん文法構造を分析しながら精読など無理ですから速読中心です。
そんなに速く読むわけではないでしょうけど、どんどん読むという意味で速読(多読)でしょう。単語とか語順とかが気になり始めたら少し精読の要素が出てきます。
受験などの試験合格が目的なら、速読中心の勉強をする人はいないでしょう。一語一語の意味や、文の構造が分かっていないと点数に結びつかないからです。
でも、TOEICのような試験なら速く読まないと回答時間が足りませんから、早く読むスキルも必要です。
学習段階についても、語彙や文法知識も少ない初級者のころに「速読しろ」と言われても無理ですよね。当然、初級者のころは精読中心の勉強になります。
その後、中級者、上級者となるにつれて速読の要素が増えてくるのが普通だと思います。
というように、精読と速読はどちらか一つが大切という訳ではなく、年齢、目的、学習段階などによって割合を変えるべきものです。
子どもの英語リーディング
では、小学生の英語リーディングの勉強についてはどうでしょうか?
結論を先に言うと、小学生の英語リーディングの勉強は、速読多めにした方が効果が上がると思います。
正確に言うと、速読というよりも、英語を楽しみながらどんどん読むという経験が大切です。
上で書いた通り、未就学児のような幼い子どもの場合は、もともと速読(多読)中心になると思います(わたし自身は子どもの英語学習は小学校からで十分という立場ですが)。
しかし、小学生になると別の要素も出てきます。
それが何度も言っている「理屈タイプ」と「感覚タイプ」の問題です。
「理屈タイプ」は分析好きな頭をしているので、英語を精読しようとします。
特に英検などの試験を目指して勉強している子は、精読中心の勉強になりがちです。
それ自体は素晴らしいことです。文の構造が理解できて、文法用語も分かるというのは将来役に立つことですからそのまま学習を続けるべきです。
ところが、精読中心の勉強をしている子は、どこかの時点で「英語には詳しいのに思ったほど伸びない」ということになりがちな傾向があります。
その原因となるのが、速読の不足なのではないかと考えています。
それは、「読む」という行為の本質的な意味に関係することです。
精読というのは、「読む」の一種ではありますが、どちらかというと「解読」に近いことです。
内容を理解するとか、共感するとかいうよりも、文の構造を分解して分析することです。
ところが、人が本当の意味で文章を読んでいるときに文の構造を分解して分析するでしょうか?
普段、日本語をすらすら読んでいるときのことを思い浮かべてください。
気になるあの人からのメールとか、本当に面白い小説を読んでいるときは、文の構造ではなく、書かれている内容そのものを読んでいるはずです。
新聞記事を読むときも、少々分からない言葉があっても気にせず、どんどん先を読んで大まかな意味を把握しているはずです。
人が本当の意味で「読んでいる」ときには、「内容を読んでいる」のです。
そういった内容を読む読書体験をすることが、子どもの読む力の向上に大きく役立つのだと感じています。
内容があまり難しいものだとどんどん読み進められませんから、読む本はある程度楽に読めるものが良いと思います。
まとめると、子どもの英語リーディング力を向上させるためには、
「ストレスなく読めるレベルの本」を「高速」で「大量に読む」ことが大切です。
大人の場合は?
では、大人の場合はどうでしょうか?
学生や社会人の場合は、学習段階に合わせておおまかに次のようにするのが良いと思います。
- 初級者・・・精読80% - 速読20%
- 中級者・・・精読50% - 速読20%
- 上級者・・・精読10% - 速読90%
数字はあくまで目安です。自分にあった割合を見つけて工夫すると良いでしょう。
さらに言いますと、上級者の先では精読と速読の区別がなくなるのが理想ですね。
「すごいスピードで読んでいるけど、内容もしっかり頭に入っている」なんて最高です。
仕事上の重要な資料はしっかり読む必要があるでしょうし、資格試験を目指している方はしっかり精読する必要もあるでしょう。
しかし、勉強のどこかに速読(多読)の要素を組み込んでおくと、のちのちの英語力向上に大きく役立ちますのでおすすめです。
蛇足ですが
最後に、遠い昔に読んだ本にあったエピソードを紹介します。
英語の達人と言われる、ある日本人の老学者が新幹線で東京駅に着きました。老学者は、迎えに来た若い学者に話しかけました。
老学者「新幹線の中で読んだんだが、アメリカに新幹線を導入する計画があるらしいね」
若い学者「へえ、そうなんですね。何で読んだんです?」
老学者「えーっと何だったかな?」
若い学者「それは英語で読んだんですか?それとも日本語で?」
老学者「それも思い出せんのだよ。年は取りたくないな。」
若い学者は、それを聞いてぞっとしました。
新幹線を降りたときに老学者が英字新聞をカバンに入れていたことを思い出したからです。
わたしもこの老学者の域を味わってみたいものです。