この記事では、フリーランスの実務翻訳者になることを目指している人を対象に、トライアルを受けて翻訳者になるための手順を簡潔・具体的にまとめています。
わたし自身は、6年前からフリーランスでの翻訳を始めました。
これまでに6社のトライアルを受け、その内の4社に合格しました。
現在は2社の翻訳会社からお仕事を頂いています。
先日、ある知人に「翻訳に興味があるのだけど、どうすれば翻訳者になれますか?」と聞かれたので、その人に答えた内容に少し加味したものです。
アドバイスする立場だったので、やや上から目線になっていたらすみません。
まず何といっても翻訳会社のトライアルに合格することを第一に考える必要があります。
念のために言いますと、トライアルというのは、各翻訳会社(エージェント)が応募者に課す入社試験のようなものです。
トライアルに合格すれば、その翻訳会社に登録され、(運が良ければ)仕事を回してもらえるようになります。
なお、翻訳の仕事をするには、
1.翻訳会社に登録する。
2.クラウトソーシングサイト(ランサーズなど)から仕事を得る。
3.クライアント(メーカーなど)と直接契約する。
の3つの方法がありますが、ここでは1の方法について述べています。
「翻訳者になるためには?」と考えたときに、いつまでも勉強法のことを気にするひとが多いみたいです。
もちろん勉強法も大切なのですが、勉強だけを続けていたら、いつまでたっても翻訳勉強中のままです。
逆に、トライアルに受かりさえしたら、その日から「翻訳者です!」と名乗ることができます。
「もうトライアルを受けても大丈夫」という客観的な基準は存在しません。
もちろん人それぞれではあるのですが、トライアルに興味が出てきたということは、そろそろ挑戦してみても良い頃かもしれません。人生は短いです。
<手順1> トライアルを受ける翻訳会社を決定して申し込む。
アメリアなどの求人サイトもありますが、ネットで翻訳会社を検索するだけで十分です。
Googleで[翻訳者 募集]だとか、[翻訳会社 求人]とか入力して検索すると翻訳会社がたくさん表示されます。
できれば、自分が狙っている分野も一緒に検索するとよいです。[翻訳者 募集 契約書]みたいな形ですね。
すべての会社が翻訳者を募集中なわけではありませんが、半分以上の会社では何らかの形で「翻訳者募集」のページがあると思います。
そこに申し込みフォームがあることがほとんどなので、必要事項を入力して申し込むだけです。
担当者のメールアドレスだけがある場合は、次のような文面でメールを送るとよいでしょう。
初めまして。〇〇と申します。 貴社の翻訳トライアルを受験することを希望いたします。 履歴書を含む必要書類を添付いたしましたので、お取り計らいの程何卒よろしくお願い申し上げます。
担当者さんも忙しいでしょうから、あまりあれこれ書かずに簡潔な方がよいと思います。
文面にも書きましたが、履歴書や職務経歴書を要求されることがほとんどです。
用意しておきましょう。『実務翻訳ガイド』などのムックに書き方の例があります。
<手順2>課題を全力で訳す。
しばらくするとトライアルの課題が送られてきます。
せいぜい600ワード程度の文章がほとんどです。
ここでは深入りしませんが、訳文の作成にあたっては正確さ(ミスのなさ)および言い回しや入力仕様が統一されているかという点が重要です。
ある意味では、訳文の表現力以上にチェックされるようです。
訳文が完成したら、必ず一晩寝かせてから何度も確認してから提出しましょう。
提出方法も含めて、とにかく先方の要求通りに行うことが重要です。
<手順3>契約を交わす。
合否の連絡はある日突然届きます。2週間から1か月くらいかかることも珍しくありません。
残念ながら不合格だった場合は、別の会社に挑戦するか、しばらく勉強してレベルアップに努めます。
晴れてトライアルに合格すると、先方から登録のための各種書類が届きます。
最近は、登録の際に業務委託契約書と秘密保持契約書にサイン・押印するよう要求されることが多いです。
ほとんどの場合、契約書はサイン・押印してからPDFに落とし込んでから送ります。
以上で、あなたは晴れて翻訳者です。
しかし、翻訳会社に登録されても、すぐに仕事が来ることはあまりありません。
わたしの場合、最短で登録の3日後に仕事が来たことがありますが、最長のケースでは、登録後一度も仕事が来たことがなく、今も記録更新中です(笑)
<勉強法について少しだけ>
わたしは英語の勉強は基本的に独学だと思っていますが、翻訳の勉強は独学だけでは不十分だと思っています。
翻訳は、単に自分の理解度を測るものではなく、相手に見てもらうことを前提としたものですから、勉強の中で自分が訳したものを誰かに見てもらうというプロセスが必ず必要になるのではないかと思います。
そのためには、やはり翻訳学校で学ぶか(通学・通信)、翻訳サークルに入るなどして他人からのフィードバックをもらうようにした方が良いです。
最後に、トライアルを受けて翻訳者になるという上記の内容にそぐわないようですが、実際の仕事では人とのつながりの中で仕事が舞い込むことが多いと感じます。
トライアルを受けて仕事を得るのと、人とのつながりから仕事を得るのがちょうど半々というイメージです。
そのためには、やはりまずは何とか1社のトライアルに受かって業界とのつながりを持つことが大切でしょう。
翻訳学校で学ぶのも講師の方やその他の関係者とのつながりを持つために有効です。